シャンプーの後の排水溝、朝起きた時の枕元、部屋の床に落ちている数本の髪の毛。自分の抜け毛を目にするたびに、ドキッとして不安になる方は多いでしょう。しかし、髪の毛が抜けること自体は、実は誰にでも起こっている極めて自然な生理現象です。大切なのは、その抜け毛が正常な範囲内なのか、それとも何らかの対策が必要な危険信号なのか、その境界線を知っておくことです。私たちの髪の毛には、「ヘアサイクル」と呼ばれる寿命があります。一本一本の髪は、成長しては抜け落ち、また新しく生えてくるというサイクルを絶えず繰り返しているのです。このサイクルは、髪が太く長く成長する「成長期」(2〜6年)、成長が止まる「退行期」(約2週間)、そして抜け落ちるのを待つ「休止期」(約3〜4ヶ月)の三段階に分かれています。日本人の髪の毛は約10万本あるとされ、そのうちの約10%が常にこの休止期にあるため、健康な人でも一日に50本から100本程度の髪の毛が自然に抜けています。これが「正常な抜け毛」です。では、異常な抜け毛とはどのような状態でしょうか。まず、単純に「本数」が一つの目安になります。毎日明らかに200本を超えるような抜け毛が続く場合は、ヘアサイクルが乱れている可能性があります。特に、季節の変わり目でもないのに、急に抜け毛が増えたと感じる時は注意が必要です。しかし、本数以上に重要なのが、抜けた髪の「質」です。正常なヘアサイクルを終えた抜け毛は、毛根がふっくらと丸みを帯びていますが、ヘアサイクルが乱れると、まだ十分に成長していない細く短い髪の毛が抜けるようになります。もし、あなたの抜け毛の中に、このような弱々しい毛が多く混じっているなら、それは頭皮環境の悪化や、AGA(男性型脱毛症)などのサインかもしれません。髪が抜けることに過度に神経質になる必要はありませんが、その量と質に変化がないかを日頃から観察する習慣を持つことが、異常を早期に発見するための鍵となるのです。