三十五歳を過ぎた頃からでした。朝、髪をセットしても、なんだかトップがぺたっとしてボリュームが出ない。美容室で「少し分け目が気になりますね」と、何気なく言われた一言が、ずっと心の棘のように刺さっていました。気のせいだと思いたかったのですが、ある日、太陽光の下でスマートフォンのインカメラに映った自分の姿を見て、愕然としました。分け目の地肌が、思った以上に白く、広く見えたのです。その日から、人の視線がすべて私の頭頂部に集まっているような気がして、電車で座るのも、人と近くで話すのも怖くなりました。インターネットで「女性 薄毛 分け目」と検索しては、様々な育毛剤やシャンプーを試しましたが、気休めにしかなりません。絶望的な気持ちで過ごしていた時、「FAGA」という言葉と、それが専門のクリニックで治療できるという事実を知りました。勇気を振り絞って予約の電話をかけた日のことを、今でも鮮明に覚えています。クリニックの扉を開けるまでは、恥ずかしさと不安でいっぱいでしたが、女性のスタッフさんが優しく迎えてくれ、カウンセリングでは医師が私の悩みを真摯に聞いてくれました。マイクロスコープで見た自分の頭皮は、想像以上に細く弱々しい髪の毛ばかりでショックでしたが、同時に「ここから始めるんだ」という覚悟も決まりました。私が選んだのは、内服薬と外用薬を併用する治療法でした。治療開始後の一ヶ月は、初期脱毛で抜け毛が増え、本当にこのままで大丈夫なのかと不安で泣きそうになった日もありました。しかし、医師の「これは効いている証拠ですよ」という言葉を信じて続けました。三ヶ月が過ぎた頃、ふと髪をかき上げた時の指先の感触が、以前と違うことに気づきました。髪にハリが出てきたのです。半年後には、美容師さんから「新しい髪がたくさん生えてきてますね!」と言われ、涙が出るほど嬉しかった。FAGA治療は、私に髪だけでなく、失いかけていた自信と、前を向く勇気を取り戻させてくれました。もし、同じように悩んでいる方がいるなら、おすすめしたいです。諦めないで、専門家を頼る勇気を持ってくださいと。