日々多くの薄毛患者と向き合う専門医として私は診察室に入ってくる患者さんの表情や仕草から彼らが抱える不安の大きさを肌で感じていますがそれと同時に医学的な視点から冷静に進行レベルを判定し最適な治療のロードマップを描くことが私の使命であると考えています。初診の際に行う進行レベルの判定は単にハミルトンノーウッド分類のチャートと患者さんの頭を見比べるだけの単純な作業ではなく問診や触診マイクロスコープによる拡大観察などを組み合わせた総合的な診断プロセスです。まず私が注目するのは生え際の状態であり特に産毛の有無やその質を詳細に観察します。進行している部分の境界線には軟毛化した細い毛が多く見られこれがどの範囲まで広がっているかを見極めることで現在のステージだけでなく今後どの程度進行する可能性があるかという予後を推測することができます。また頭頂部の観察においてはつむじを中心にどの程度密度が低下しているかを確認しますがここでは照明の当て方を変えながら地肌の透け具合を客観的に評価し患者さん自身が気づいていない初期の薄毛を発見することもあります。分類を行う際には患者さんの年齢も重要な要素となり例えば二十代で急速に三型まで進行しているケースと五十代でゆっくりと三型になったケースとでは同じ分類であっても治療の緊急度や選択すべき薬剤の強さが全く異なります。若年層での進行は男性ホルモンの影響を強く受けている可能性が高く放置すれば短期間で六型や七型まで進んでしまうリスクがあるためより強力な抑制治療を提案することが多いです。一方で進行レベルが高い患者さんに対しては薬による改善の限界を正直に伝えることも医師の誠実さであると考えており例えばすでに毛穴が消失して皮膚が硬化している部分には薬の効果が期待できないため植毛などの外科的治療の適応について説明します。患者さんの中には自分はもう手遅れだと悲観して来院される方もいらっしゃいますが正確な分類診断を行うことでまだ回復可能な毛根が残っていることが判明し希望の光が見えることも少なくありません。また分類診断は治療の効果測定にも役立ちます。治療開始前に正確なステージと毛髪の状態を記録しておき数ヶ月ごとの検診で比較することで治療薬が効いているのか進行が止まっているのかを客観的に評価し必要に応じて治療方針を微調整することができます。時には患者さんが主観的に効果を感じられないと訴える場合でもマイクロスコープ画像で見ると産毛が太くなっていることが確認でき治療継続のモチベーション維持につながることもあります。私たちは分類という物差しを使って現状を数値化し言語化することで患者さんと共通の目標を設定し二人三脚で治療に取り組むための土台を作っているのです。薄毛は病気というよりも体質や遺伝的な形質に近いものですが医学の力でコントロールすることが可能な時代になっており自分の進行レベルを正しく知ることはそのコントロール権を自分の手に取り戻すための第一歩です。