AGA治療薬の副作用というと、多くの人が性欲減退やEDといった性機能関連のものを思い浮かべます。しかし、頻度は非常に稀であるものの、フィナステリドやデュタステリドといった治療薬の副作用として、「精神的な症状」が現れる可能性があることも、知っておくべき重要な情報の一つです。具体的には、「抑うつ症状」や「気分の落ち込み」「不安感」といったものが報告されています。実際に、これらの治療薬の添付文書(医薬品の公式な説明書)にも、副作用の項目に「抑うつ症状」が記載されています。なぜ、AGA治療薬が精神面に影響を及ぼす可能性があるのか、その正確なメカニズムはまだ完全には解明されていません。しかし、仮説の一つとして、脳内での神経伝達に関わる「ニューロステロイド」という物質の生成に、薬が影響を与えるのではないか、という考え方があります。AGA治療薬が阻害する5αリダクターゼという酵素は、テストステロンをDHTに変換するだけでなく、他のステロイドホルモンの代謝にも関わっており、その一部が脳機能に影響を与えている可能性が指摘されているのです。ただし、ここで強調しておきたいのは、これらの精神的な副作用の発現頻度は極めて低いということです。また、薄毛という悩み自体が、自己肯定感の低下や強いストレスを引き起こし、気分の落ち込みに繋がっているケースも少なくありません。そのため、症状が現れたとしても、それが本当に薬による直接的な副作用なのか、あるいは心理的な要因によるものなのかを区別するのは非常に困難です。重要なのは、もし治療を開始してから、理由もなく気分が晴れない、何事にもやる気が起きない、といった心の変化を感じた場合には、それを一人で抱え込まず、処方医に相談することです。AGA治療は、髪だけでなく、心の健康も保ちながら進めるべきものです。身体の変化だけでなく、心の変化にも耳を傾ける姿勢が大切になります。
性機能だけじゃない?AGA治療薬と精神的な副作用