薄毛や抜け毛の悩みは、すべてがAGA(男性型脱毛症)によるものとは限りません。世の中には様々な種類の脱毛症が存在し、それぞれ原因や対処法が異なります。誤った自己判断で対策を講じても効果がないばかりか、症状を悪化させてしまう可能性もあります。そのため、AGAと他の脱毛症との違いを知り、正しく見分けるための判断基準を持つことが重要です。AGAと最も間違えやすいのが「円形脱毛症」です。両者の最大の違いは、脱毛の仕方です。AGAが、生え際や頭頂部から全体的に徐々に薄くなっていくのに対し、円形脱毛症は、ある日突然、コインのような円形や楕円形に、境界線がはっきりとした脱毛斑が現れるのが特徴です。原因も、AGAが男性ホルモンに起因するのに対し、円形脱毛症は、免疫機能の異常による自己免疫疾患の一種と考えられています。次に「脂漏性脱毛症」です。これは、皮脂の過剰な分泌によって頭皮に炎症が起こり、毛穴が詰まることで引き起こされる脱毛症です。判断基準となるのは、頭皮の状態です。フケが多く、特に湿ったベタベタしたフケが出る、頭皮に赤みやかゆみが強い、といった症状があれば、脂漏性脱毛症の可能性があります。AGAは、基本的には頭皮に炎症を伴いません。また、「粃糠(ひこう)性脱毛症」は、乾燥したフケが大量に発生し、それが毛穴を塞ぐことで起こります。頭皮が極度に乾燥し、乾いた細かいフケが目立つのが特徴です。これらの脱毛症は、原因が異なるため、AGAの治療薬を使っても効果はありません。皮膚科での適切な診断と、原因に合わせた治療が必要となります。脱毛のパターン、頭皮の状態(フケ、かゆみ、赤みの有無)を冷静に観察し、AGAの特徴と一致しないと感じた場合は、速やかに皮膚科専門医を受診することが、正しい判断と言えるでしょう。