AGA治療において、抜け毛を抑える「守り」の治療薬と並行して、積極的に発毛を促す「攻め」の役割を担うのが「ミノキシジル」です。特に、頭皮に直接塗布する「ミノキシジル外用薬」は、日本で唯一、発毛効果が認められ、ドラッグストアなどでも購入できる成分として広く知られています。もともとミノキシジルは、高血圧の治療薬として開発された経緯があり、その副作用として多毛が報告されたことから、発毛剤としての研究が進められました。その正確な発毛メカニズムは、今も完全には解明されていませんが、いくつかの有力な作用が考えられています。一つは、頭皮の血管を拡張させ、血行を促進する効果です。毛根の毛母細胞は、毛細血管から栄養や酸素を受け取って髪を成長させるため、血流の改善は、髪の成長に不可欠な栄養素を隅々まで行き渡らせることに繋がります。もう一つは、毛母細胞そのものに直接働きかけ、細胞の増殖を促したり、髪の成長期を延長させたりする作用です。さらに、髪の成長を促す様々な「成長因子」の産生を促進することも分かっています。ミノキシジル外用薬は、1日2回、薄毛が気になる部分の頭皮に直接塗布して使用します。重要なのは、髪ではなく「頭皮」にしっかりと塗ること、そして毎日継続することです。効果を実感するまでには、少なくとも4ヶ月から6ヶ月の期間が必要とされています。市販薬には、ミノキシジルの濃度が1%や5%のものがあり、一般的に濃度が高いほど効果も期待できますが、その分、頭皮のかゆみやかぶれといった副作用のリスクも高まる可能性があります。フィナステリドなどの内服薬で抜け毛の進行を食い止めながら、ミノキシジル外用薬で発毛を力強く後押しする。この攻守のバランスの取れた組み合わせが、AGA治療の王道パターンの一つとなっているのです。