AGA治療の第一選択薬として世界中で広く使用されている「フィナステリド」(商品名:プロペシアなど)。その効果は確立されていますが、多くの方が最も懸念するのが「性機能への影響」ではないでしょうか。具体的には、性欲減退、勃起機能不全(ED)、射精障害といった副作用が報告されており、治療をためらう大きな要因となっています。しかし、これらの副作用について、客観的なデータに基づいて正しく理解することが重要です。まず知っておくべきは、これらの副作用の発現頻度は、決して高くないということです。日本国内で行われた臨床試験では、フィナステリドを服用したグループにおける性欲減退の発現頻度は1.1%、勃起機能不全は0.7%でした。これは、100人服用して1人か2人程度という割合です。もちろん、ゼロではありませんが、多くの人は問題なく服用を続けています。さらに興味深いのは、薬の有効成分が含まれていない偽薬(プラセボ)を服用したグループでも、同様の副作用が一定の割合で報告されているという事実です。これは、薬を飲んでいるという意識自体が心理的な影響を及ぼし、副作用のような症状を引き起こす「ノセボ効果」の可能性を示唆しています。「フィナステリドは性機能に影響するらしい」という先入観が、不安を呼び、実際に機能の低下を感じさせてしまうこともあるのです。また、万が一、服用によって性機能の低下を感じたとしても、その多くは服用を中止すれば回復することが報告されています。自己判断で服用をやめるのではなく、まずは処方医に相談することが大切です。医師の判断のもと、減薬や休薬、あるいは他の治療法への変更を検討することができます。性機能への影響はデリケートな問題ですが、過度に恐れることなく、客観的な事実を知り、信頼できる医師と相談しながら治療に臨むことが、賢明な判断と言えるでしょう。
フィナステリドの副作用?性機能への影響を正しく知る