一日の疲れを癒やすはずのバスタイムが恐怖の時間へと変わってしまったのはいつの頃からだったでしょうか。シャンプーを終えて目を開けた瞬間排水溝に溜まった黒々とした髪の塊が視界に飛び込んでくるたびに心臓が早鐘を打ちまたこれだけ抜けてしまったのかという絶望感が胸を締め付けるのです。男性型脱毛症いわゆるAGAの初期症状として多くの男性が経験するのがこの異常な抜け毛の増加でありそれは単なる生理現象の範疇を超えて精神的な平穏を脅かす深刻な悩みとなります。本来人間の髪はヘアサイクルという一定の周期で生え変わっており一日におよそ五十本から百本程度の髪が自然に抜け落ちるものですがAGAを発症するとこのサイクルに狂いが生じ成長期が極端に短縮されることによって髪が太く長く育つ前に抜け落ちてしまうため抜け毛の本数が急激に増加し二百本や三百本といった異常な数に達することもあります。特にシャンプー時は物理的な摩擦が加わるため一日の抜け毛の六割から七割が発生すると言われておりその視覚的なインパクトは強烈で自分はもう禿げてしまうのではないかという恐怖心を増幅させる要因となります。しかしここで冷静にならなければならないのは抜け毛の数だけに囚われて一喜一憂すること自体がストレスとなりさらなる抜け毛を誘発するという悪循環に陥る危険性があるということです。重要なのは抜けた本数そのものよりも抜けた髪の質であり排水溝に溜まった髪をよく観察してみたときにそれが太くて長いしっかりとした髪であればヘアサイクルを全うした自然な抜け毛である可能性が高いですがもし細くて短い産毛のような髪が多く混じっているようであればそれは成長途中で力尽きたAGA特有の抜け毛である可能性が極めて高くなります。この軟毛化と呼ばれる現象こそが薄毛の真犯人であり本数の増加以上に警戒すべきサインなのです。排水溝の掃除をするたびに溜め息をついているだけでは事態は好転しませんのでその恐怖を行動力に変えて専門医の診断を受けたり生活習慣を見直したりするきっかけにすることが未来の髪を守るための第一歩となります。恐怖から目を背けずに現実を直視し正しい知識を持って対策を講じれば排水溝の黒い塊は減らすことができ再びリラックスしたバスタイムを取り戻す日が必ず訪れるはずです。
排水溝の黒い塊に震える夜の物語