私たちが鏡を見て「薄くなったかも」と感じる主観的な判断と専門医が行う医学的な診断には大きな隔たりがあり医師は単に髪の量を見るだけでなくマイクロスコープなどの機器を駆使して毛根レベルでの微細な変化をチェックしAGAであるかどうかの確定診断を下します。医師が診断の際に注目するポイントは大きく分けて三つあります。一つ目は「軟毛化の有無」です。健康な髪は太くて硬くコシがありますがAGAの影響を受けた髪はヘアサイクルが短縮されるため十分に成長できず細くて短い産毛のような「軟毛」に変化してしまいます。医師はマイクロスコープで頭皮を拡大し太い健康毛の中にこの軟毛がどのくらいの割合で混じっているかを確認します。もし後頭部の髪に比べて前頭部や頭頂部に軟毛が明らかに多ければそれはAGAの強力な証拠となります。二つ目は「毛髪密度の低下」です。通常一つの毛穴からは2〜3本の髪が生えていますがAGAが進行すると1本しか生えていなかったり毛穴自体が塞がってしまっていたりすることがあります。医師は一定面積あたりの毛髪数をカウントし年齢平均と比較して密度が低下していないかをチェックします。そして三つ目は「頭皮の状態」です。AGAは脂漏性皮膚炎などを併発していることが多く頭皮の赤みや過剰な皮脂分泌フケの有無などを観察することで脱毛の原因がAGA単独なのかそれとも他の皮膚疾患が関与しているのかを鑑別します。また問診においては家族歴(遺伝的要因)や生活習慣ストレスの有無などを詳細にヒアリングしこれらと視診の結果を総合的に判断して診断を下します。例えば「最近抜け毛が増えた」という訴えがあっても軟毛化が見られず毛根がしっかりしている場合は一時的な休止期脱毛症やストレス性の脱毛と診断されることもありこの場合はAGA治療薬ではなく生活指導やサプリメントの処方で様子を見ることもあります。専門医の診断は単なる「ハゲ判定」ではなく「なぜ抜けているのか」「どうすれば治るのか」を論理的に解明するプロセスでありこの正確な診断があって初めて効果的な治療が可能になるのです。自己判断で市販薬を使い続けるよりも一度プロの目で見てもらうことがいかに重要であるかはこの診断精度の差に表れていると言えるでしょう。