毎朝鏡を見るたびに額が広くなったような気がしたりシャンプーの後の排水溝に溜まる抜け毛の量に戦慄したりして自分はもしかしてAGAなのではないかと不安にさいなまれている男性は数多く存在しますがその不安を解消しようとインターネットで検索し自己判断を下すことには大きなリスクが潜んでいることをまず理解しなければなりません。多くの人が陥りがちな罠として正常性バイアスと呼ばれる心理作用がありこれは自分にとって都合の悪い情報を無意識のうちに過小評価してしまう心の防衛本能の一種で例えば生え際が後退しているのを見て見ぬふりをしたり単なる疲れや季節の変わり目のせいだと思い込んだりして自分はまだ大丈夫だと言い聞かせてしまう現象です。逆に心気症的に過剰に心配しすぎて正常な範囲の抜け毛さえも病的なものと捉えてしまい精神的に追い詰められてしまうケースもありどちらにしても主観のみに頼った判断は正確性を欠き適切な対策を遅らせる原因となります。医学的な見地からAGAを正しく判断するためにはまずAGAが男性ホルモンと遺伝的要因が複雑に絡み合った進行性の疾患でありヘアサイクルという髪の成長周期が乱れることによって引き起こされるというメカニズムを深く理解する必要があります。正常なヘアサイクルでは髪は二年から六年かけて太く長く成長しますがAGAを発症するとジヒドロテストステロンという悪玉ホルモンの影響で成長期が数ヶ月から一年程度に極端に短縮され髪が十分に育つ前に抜け落ちてしまうため結果として細く短い軟毛が増え地肌が透けて見えるようになるのです。したがってAGAであるかどうかの最大の判断基準は単に髪が抜ける量ではなく抜けた髪の質と生えている髪の変化にあり特に生え際や頭頂部といった特定部位において軟毛化が進んでいるかどうかが決定的な指標となります。専門医が行う診断ではハミルトンノーウッド分類などの国際的な基準を用いて進行度を判定するだけでなくダーモスコープという特殊な拡大鏡を使って頭皮を観察し一つの毛穴から生えている髪の本数や太さのばらつき毛根の状態などを詳細にチェックします。またマイクロスコープで見るとAGAの患部では太い毛に混じって産毛のような細い毛が多く見られ毛穴の周囲に炎症などの異常がないかも確認されます。さらに血液検査を行って甲状腺機能障害や栄養障害など脱毛を引き起こす他の全身疾患がないかを除外診断することも重要でありこれらのプロセスを経て初めてAGAという確定診断が下されるのです。最近では遺伝子検査によってAGAの発症リスクや治療薬の効きやすさを判定することも可能になっており科学的なデータに基づいた客観的な判断材料が増えています。自己判断で市販の育毛剤を使い続けたり逆に効果のない民間療法に手を出したりして貴重な時間と髪を失ってしまう前に自分の感覚を疑い医学的な診断基準という確かな物差しを持って現状を把握することがAGAとの戦いにおける最初にして最大の防御策となるのです。