四十歳の誕生日を過ぎた頃から、鏡を見るのが少しずつ憂鬱になっていました。分け目の地肌が、以前よりも白く、くっきりと目立つようになったのです。美容師さんにも「少しボリュームが減りましたか?」と気遣われる始末。そこから私の、暗くて長いトンネルのような日々が始まりました。髪型でなんとか隠そうと、トップにボリュームを出すスプレーを使い、風の強い日は手で髪を押さえながら歩く。友人との食事中も、頭上からの照明が気になって、心から会話を楽しむことができませんでした。このままではいけない。悩んでいるだけでは何も変わらない。そう思い、私は震える手で女性専門の薄毛クリニックの予約を取りました。診察室で、マイクロスコープに映し出された自分の頭皮を見た時の衝撃は忘れられません。細く弱々しくなった髪の毛たち。医師から告げられた診断は「FAGA」でした。しかし、不思議とショックよりも「やっと原因がわかった」という安堵感の方が大きかったのです。その日から、私は医師の指導のもと、塗り薬による治療と、食生活の改善、そしてサプリメントの摂取を始めました。すぐに効果が出たわけではありません。最初の三ヶ月は、正直あまり変化を感じられず、何度もくじけそうになりました。しかし、半年が経った頃、ふと気づいたのです。シャンプーの時の抜け毛が、明らかに減っていることに。そして、ドライヤーで髪を乾かすと、根元がふんわりと立ち上がるようになっていました。一年後、定期検診でマイクロスコープを見ると、以前は細く頼りなかった髪が、しっかりと太くなっているのが分かりました。何より嬉しかったのは、髪の変化とともに、私の心も元気になっていったことです。人の視線を気にすることなく、思いっきり笑えるようになった。新しい髪型にも挑戦できるようになった。FAGAとの向き合いは、私に、自分の体と心を大切にすることを教えてくれました。もし今、同じ悩みで一人苦しんでいる方がいるなら、伝えたいです。諦めないでください。正しい知識と一歩踏み出す勇気が、きっとあなたの未来を明るく照らしてくれます。