AGA治療を開始する際に多くの人が抱く疑問の一つに「この治療は一体いつまで続ければいいのか」という終わりなき旅への不安がありますが、結論から言えばAGA治療には明確な「完治」という概念が存在せず、フサフサな状態を維持したいと望む限りは治療を継続する必要があります。AGAは進行性の慢性疾患であり、治療薬によってヘアサイクルを正常に保っている状態はいわば「ダムで水をせき止めている」ようなもので、薬の服用をやめれば再びジヒドロテストステロンの影響を受けてヘアサイクルが短縮し、薄毛が進行してしまうからです。しかしこれは一生涯同じ強度の治療を続けなければならないという意味ではありません。年齢を重ねてライフステージが変化すれば、髪に対する価値観や優先順位も変わってくるため、それに応じた「出口戦略」や「減薬」を検討する時期が必ず訪れます。例えば二十代三十代の現役世代であれば、見た目の若々しさが仕事や恋愛に直結するため、発毛効果の高いミノキシジルと進行抑制のフィナステリドを併用する積極的な治療を選択する人が多いでしょう。しかし六十代七十代となり定年退職を迎えた後では、「ある程度の毛量があれば十分」「現状維持で構わない」と考えるようになるかもしれません。そのような段階になれば、費用や副作用のリスクを考慮してミノキシジルを中止し、フィナステリドだけを継続して今の髪を維持するという「守りの治療」へとシフトすることが可能です。さらに高齢になり「もう髪のことは気にしない」という境地に達したならば、医師と相談の上ですべての治療を終了するという選択ももちろんあり得ます。治療をやめれば徐々に元の薄毛の状態に戻っていきますが、急激にすべての髪が抜け落ちるわけではなく、数ヶ月かけてゆっくりと本来のヘアサイクルに戻っていくため、その変化を受け入れられるかどうかが判断の基準となります。つまりAGA治療のゴールは医学的な完治ではなく、患者自身の「納得」にあります。自分が何歳までどのような自分でありたいか、という人生設計に合わせて治療の強度や終了時期を自分で決めることができるのがAGA治療の特徴であり、医師はその意思決定をサポートする伴走者に過ぎません。ゴールのないマラソンではなく、自分でゴールテープの位置を決められるレースだと捉えれば、治療に対する心理的な負担も軽くなるはずです。